ANZBC2018に参加(第1回)

日本バイオ炭普及会常任幹事 岩谷宗彦

2018年8月14日から16日にかけて、オーストラリア・クィーンズランド州ビリンガのサザンクロス大学ゴールドコーストキャンパスにおいて、オーストラリア ニュージーランド バイオチャー カンファレンス2018(ANZBC2018)が開催され、参加してきたのでその概要を3回に分けて報告する。

オーストラリアは筆者が生まれて初めて訪れた外国で、ちょうど30年前にワーキングホリデービザを利用して3か月間滞在したことがある。会場近くのサーファーズパラダイスでは2週間ほど過ごした。当時はもっぱら長距離バスでの移動が主流であったが、今では豪州各地に空港が整備されており、LCCの普及などもあり、飛行機で短時間で移動できるようである。

日本からゴールドコースト空港へは、成田空港発のジェットスター航空が直行便を運航している。夜9時過ぎの出発で翌朝7時前に到着する。飛行時間は約9時間、時差は1時間である。宿は事務局から高価なリゾートホテルを勧められたが、会場のサザンクロス大学から徒歩5分ほどのモーテルに滞在した。南半球は冬でシーズンオフのため、キッチンや洗濯機等完備の長期滞在用の宿に格安で泊まることができた。

ANZBC2018の受付は13日夕方から行なわれていたので、現地確認も兼ねて歩いて会場まで行き、登録を済ませた。日本からは筆者のみの参加であった。

会場となったサザンクロス大学ゴールドコースト校

今回のカンファレンスバナー

 

1日目(8月14日)

 

初日は8:30から9:00に当日受付、9:00から主催者のDon Coyne氏(Byron Biochar社代表)より挨拶があり、今回は第2回目のANZBCであること、39のプレゼンテーション、13か国から160人の参加者があったこと、バイオチャーの規格づくりや企業化などについて大いに議論して欲しい旨報告があった。

会場の様子。オーストラリア訛の英語が聞き取りにくく、苦労した。

会場等の質疑応答に使われたマイク。スポンジできているので当たっても危険ではなく、ポンポン弾むようすがコミカルだった。オージーボールの国らしく、上手にスローイングする参加者もいた。

なお、本会議は学術的な集まりではなく、民間企業により運営されていることもあり、要旨集の配布はなく、報告内容を知りたい場合はビデオ撮影された映像を購入し、それをダウンロードして視聴する形式となっていた。

続いてOpening addressとしてGenxing Pan氏(南京農業大学・中国)のビデオメッセージが流された。以下、要旨。

──中国政府は稲わらなどのバイオチャーの生産を推進している。理由の一つに農業系廃棄物の焼却による大気汚染がある。政府は100か所のバイオチャー工場の建設を計画しており、そのうち10が完成している。バイオチャーは米、小麦、トウモロコシ、大豆、甜菜、ジャガイモの生産に役立っている。生産量はさほど増えないが、品質が向上する。また、農家が言うには、耐病性、気候変化に対する耐性が向上するとのことだ。まだ十分な供給ができていないのが課題のひとつだが、2年のうちに年間200万トンにしたい。また、バイオチャーはまだ市場経済に乗っておらず、農業者と企業との閉じたサイクルの中で生産・利用しているのが現状で、これも課題の一つである。──

 

以下、プレゼンテーションの要約を記す。Keynote speakerは質疑応答含め30分、Speakerは同20分が基本である。表題及び発表者は原文のままとした。なお、後日協賛企業のAgriFutures社の好意でそれぞれの発表の概要が公開され、以下のサイトからダウンロードできるようになった(https://www.agrifutures.com.au/product/the-australia-new-zealand-biochar-conference-2018-conference-proceedings/)。サイト下には前年ANZBC2017の概要も公開されているので参照されたい。

  • Keynote Speaker 1

Biochar A Report on World Wide Commercialization, Product Development and recent Research Findings

Stephen Joseph(Univ. of NSW, Nanjing Agricultural Univ.)

各国のバイオチャーに関する取り組み事例を紹介。輸送コストを削減するため、農地でペレットにする事例。酢液の葉面散布(Foliar amendment)は気孔や根で拡散される。中国での活動が活発になってきている。USには155、カナダに14の生産者がいる。Tom Miles氏(Technical Consultants, Inc., Portland, Oregon)はキャタピラー付きのモバイル炭化炉を開発しており、EPAのサポートを受けている。ヨーロッパでは家畜飼料用に利用されているが、生産量を増やすことと、品質基準を作って運用することが課題。酢液の利用を強調していたことが印象的であった。

会場からの質問:規格についてどう考えるか→IBIで4年間議論したが難しい問題だ。今晩議論しよう。

  • Keynote Speaker 2

Update on Avocado trial using biochar

Doug Pow(Farmer from Manjimup, Western Australia)

アボカドへのバイオチャーの施用試験結果を報告。3種類の異なる土壌で生育試験を行い1年後に比較。対象区はないが果実の収穫量が2~3倍になった。Zn、Cu、Mn、Mgが高くなった。

プロジェクトに参加のColwell氏:比較はしていないが乾燥に効く。嵐や強風で枝がこすれ合ってダメージを与えるが、バイオチャーを施用するとシリカが効くためか被害が少なくなる。バイオチャーの原料は森林残渣。10~20%で堆肥に混ぜたところ10%が最もよかった。堆肥はアボカドの株元に機械で撒いた。Cd、Cu、K、Mn、Na、P、Zn、Crは減少、Mgは増加した。結果はWebで公開している。https://www.wantfa.com.au/wp-content/uploads/2016/04/WANTFA_NF_Summer2015_Biochar-002.pdf

  • Speaker 3

Agriculture – Research has led to a modern Biochar/Reactor Activation plant, designed for cost effective use in Animal Production and Soils.

Stuart Larsson(Mara Seeds Pty Ltd & Soft Agriculture Pty Ltd)

SOFT(Sustainable Organic Farming Techniques)のブランドでバイオチャーを添加した鶏、牛、豚、羊用飼料を製造、販売している。鶏については「Green Chicken Project」を実施、バイオチャーの施用で体重が増加した、と報告した。

  • Keynote Speaker 4

Biochar-nutrient interactions in soil in relation to agricultural production and environmental protection

Nanthi Bolan(Newcastle Univ.)

各種論文からバイオチャーの特性を整理して報告。バイオチャーと炭素貯留、バイオチャーによる土壌の変化 ─物理的特性、─化学的肥沃度、─生物学的な活性

言及されているバイオチャーの利点として以下を挙げた:Long-term increases in Soil Organic Carbon, Carbon sequestration and greenhouse benefit, Improve CEC, Carbon Trading, Liming benefit, Improved soil biology, Improved crop yields, Slow release/higher plant available nutrients, I improved water holding capacity, Reduced off-site migration of agro-chemicals.

  • Speaker 5

Postcards from Kaindorf Eco-region:Messages for Biochar Network Of WA Inc

Kathy Dawson(Biochar Network of Western Australia, Warren Catchments Council, Manjimup WA)

地域で独自の炭化炉を運用、バイオチャーを活用し、6つの小さなコミュニティからなる地域内を2020年までにC02をニュートラルにすることを目標に活動。土壌炭素量増加を検証する測定システムを開発。家畜には豚、鶏、牛、ペット(猫、犬)、乗馬産業へ提供を計画。家畜排泄物の活用、300,000tの豚の排泄物が7,000~8,000tのバイオチャーになり機械により土壌へ施用、悪臭の減少に寄与している。

バイオチャーを核にした地域ぐるみでの多様な活動が印象的であった。

  • Speaker 6

Biochar- Chemical Characteristics and Biological Benefits

Graham Lancaster(EAL Southern Cross University)

バイオチャーの特性やより適切な分析手法の定義など、より一層の研究が必要である。各種炭化物のXRF分析などの結果、バイオチャー分類の出発点は以下のように考えられる。全炭素量65%以上〈全窒素1%〉、全リン0.35%以上、pH8.5以上(吸水量1:5)、ECEC 30meq/100g以上。

  • Speaker 7

The Genesis of Zeochars

David Tomlinson(Castle Mountain Zeolites)

Stephen Joseph(Univ. of NSW, Nanjing Agricultural Univ.)

ゼオライトと炭材(Hard wood)を一緒に炭化することで「Carbon Coated Zeolite」を生成する。より栄養素を含み、C、Nを固定化できる。MAC(Mineral and Chemically Activated charcoal)を木材と海藻から生成。海藻由来のMACはよりミネラルがリッチになると考えられ、10月に評価が出来上がる。炭化温度400~450℃、600~650℃でより微生物や菌類を吸着しやすくなる。

  • Speaker 8

Seaweed Farming ―Benefits and Research

Khory Hancock(The Environmental Cowboy)

海藻の炭化物による炭素固定及びブロックチェーン技術による炭素貯留クレジット市場に関する研究報告。海藻の生長速度は陸上植物の30~60倍早いため炭素固定に有効、また海水温の低下、海の酸化防止に寄与できる。しかし炭素含有率は45~65%と低い。

  • Keynote Speaker 9

CRC for High Performance Soils and the role of Biochar Research

Lukas Van Zwieten(Department of Primary Industries, NSW)

The Soil CRC(The Cooperative Research Centre for High Performance Soils)は、 オーストラリアの低採算土壌の実際的な解決方法を見つけるための科学者、企業、農家による協業体。バイオチャーは土壌改良の有効な資材、新しい炭と10年経った炭は組成が異なる。新旧の炭を併せて使うと植物によく効く。また、Jennifer Kirton氏によりバイオチャーに関する論文数の推移(2002-2017)について報告があり、2017年は1000本以上の論文が出されており、「バイオチャーはすでに確立された科学分野である」とした。

  • Speaker 10-1

Phosphorus in biochars and its availability to plants

Terry Rose(Southern Cross Plant Science)

バイオチャーは酸性土壌においてリンを集め土壌pHを上げることができるなど、土壌中のリンの挙動に関与している。その挙動を予測することは可能かどうかを検証する。XANES( (X-ray Absorption Near-Edge Structure=エックス線吸収端近傍構造)を使用して牛糞、ふすまなどに由来するバイオチャーのリン化合物を測定後、ライグラス(牧草)のポット試験でリンの抽出試験を行った。

 

  • Speaker 10-2

Energy and Nutrient recapture from solid and liquid effluents

Shane McIntosh(Southern Cross University)

廃棄物からの有用物活用法。廃棄物をHTC(hydrothermal carbonization)により炭化し、バイオコークスを製造するとともに、リンや重金属を回収する。プラントはHTCycle社による(https://htcycle.ag/en)。

 

  • Speaker 11

Learning from the B4SS Project

Ruy Anaya de la Rosa(Starfish Initiatives, Armidale, NSW, Australia)

B4SS(THE BIOCHAR FOR SUSTAINABLE SOILS)プロジェクトの紹介。バイオチャーを含めた持続可能な土壌管理のデモンストレーション活動を中国、エチオピア、インドネシア、ケニヤ、ペルー、ベトナムの6か国で展開。205の農家がバイオチャー施用の評価に参加。各国でさまざまな材料、炭化法、施用目的で試験を行っている。Annette Cowie氏、Johannes Lehmann氏、Stephen Joseph氏が関与。

https://biochar.international/

 

  • Speaker 12

Biorefining of agricultural and forestry residues to biofuels and hydrochar

Zhanying Zhang(Centre for Tropical Crops and Biocommodities, Queensland University of Technology, Brisbane)

農業、林業から排出されるバイオマスを水熱炭化処理により、バイオフュールとハイドロチャーを得る方法の開発。水熱炭化は水分の多いバイオマスの炭化に適する。ハイドロチャーは環境や農業へ利用する炭化物生産の選択肢となりえる。

 

  • Speaker 13

Short-term effects of organo-mineral enriched

biochar fertiliser on ginger yield and nutrient cycling

Michael Farrar(Griffith University)

鶏糞由来のバイオチャー、竹炭、有機畜糞肥料等を配合し、180℃・24時間炭化した「有機・無機バイオチャー肥料」によるショウガの栽培試験。商業価値は向上、ORP(酸化-還元電位)及び、リンとカリウムの可給性が向上した。しかし、有機肥料を施用した対照区と差はなかった。

 

  • Speaker 14

EDUCATORS, ARTISTS, FARMERS, SCIENTISTS & COMMUNITY

GARRY MCDOUALL(The Carbon Farm)

ニューサウスウェールズ州ビンガラで農場を経営、子供の農業体験、学生のフィールド体験などを、農場を舞台にアーティスト、農家、科学者のサポートで運営。非常にアーティスティックかつサイエンティフィックな「農育」活動の様子が報告された。

 

1日目の口頭発表は以上である。

 

会場の校舎に隣接する駐車場では、自動車でけん引して移動可能な炭化炉2基が展示されていた。ひとつはPyrolitech社の乾留式炭化炉で、ユーカリを約6時間で炭化する。もうひとつはID GAIFIRES社のガシファイアで、25kweを発電する。

Pyrolitech社の牽引式乾留式炭化炉

ID GAIFIRES社の牽引式ガシファイア

 

第2回へ続く…

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